東京高等裁判所 昭和34年(ラ)190号 決定
先ず本件抗告の適否について判断するに、記録添附の昭和三十四年三月十日附郵便送達報告書の記載によると、原決定正本は郵便に依る送達方法により昭和三十四年三月十日抗告人に対し東京都中央区月島仲通八の七において送達されたものであることが一応認められる。
しかるに抗告人はこの点につき「抗告人は住所を変更し、現在の住所は東京都中央区日本橋茅場町三丁目一二番地である。しかるに原決定正本はさきに抗告人に対し同都練馬区春日町一丁目一八二番地宛に(但し右決定正本に表示された抗告人の住所は同町一丁目一八二三番地である)発送されたが、その送達は不能となり、次で同都中央区月島仲通八の七、カチドキ薬局宛に発送され、同所において受領されたが、同所は抗告人の住所でないため現実には抗告人の手元に渡らなかつた。当時抗告人は読売新聞論説部記者として地方に出張中であつたため、右決定正本が現実に手元に入つたのは昭和三十四年三月二十日である。従つて右決定正本は同日抗告人に送達されたものというべきである。」と主張する。しかし前掲昭和三十四年三月十日附郵便送達報告書の記載及びこれに押捺してある抗告人の姓と同じ上子の受領印、記録添附の昭和三十四年三月二十八日附郵便送達報告書の記載及びこれに押捺してある右と同じ受領印、昭和三十年六月十五日附不動産仮処分調書(写)の記載、抗告人提出の昭和三十四年三月七日附郵便封筒及びその符籖(写)の記載に抗告人主張の趣旨を綜合して考えると、抗告人はさきに東京都練馬区春日町一丁目一八二三番地に住所を有していたが、その後住所を変更することとなつたため、新住所が定まるまで一時同都中央区月島仲通八の七、カチドキ薬局内に転居し、同所において抗告人宛の郵便書類の送達を受けていたこと、及び原決定正本はさきに抗告人の住所であつた練馬区春日町一丁目一八二三番地宛に発送されたが(但しその封筒には同町一の一八二と誤記されている)、当時抗告人において中央区月島仲通八の七、カチドキ薬局内に転居していて送達することができなかつたため一旦持戻りの上右転居先に送達され、昭和三十四年三月十日同所において受領されたものであることが推認され、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。右によると、原決定正本が昭和三十四年三月十日右転居先において受領された以上、他に当時これを現実に受領した者においてその受領資格又は能力に欠けるところがあつたことを窺うに足りる資料の認められない本件においては、抗告人に対し同日送達されたものと認めるのが相当である。もつとも抗告人提出の昭和三十四年三月二十二日附読売新聞社論説委員会副主事愛川重義作成名義の証明書の記載によると、抗告人は昭和三十四年三月九日より同月二十日まで地方に出張していて不在であつたことが認められ、これによると抗告人が現実に原決定正本を入手したのは抗告人所論のように少くとも昭和三十四年三月二十日であることを推認し得なくはないが、さきに認定したように原決定正本が抗告人の前記転居先に送達されている以上、他にその受領者の資格又は能力に欠けるところがあつたことを窺うに足らない本件においては、右の事由はその送達を不適法ならしめるものではなく又その送達の日を抗告人において現実に入手したときとすべきものでもない。
以上によると、原決定に対して抗告人において即時抗告の申立をし得る期間は、原決定正本が前記のように抗告人に送達されたと認められる昭和三十四年三月十日から七日以内であるところ、抗告人の本件抗告状は右期間経過後である同年三月二十四日に提出されたものであることは、右抗告状記載の作成日附及び右抗告状に押捺してある受附日附印によつて明らかなところであるから、本件抗告はこの点において不適法として却下を免れないものである。
(薄根 村木 元岡)